バトテニTOP>>長編テキスト(1日目)>>005『試験』




『大切なものを失いたくないのなら、それを全力で守ればいい。』


大事なものを無くして、涙を流していたおれの前にしゃがみこんで、そう言い切った貴方。
『失ったものはもう取り戻せないんだから、諦めろ。でも、今あるものは守る事が出来るんだ。』
『常に今を見つめろ。』
貴方はこうも言ってくれたね。

―――でも、俺には大切なものを守るだけの力はなくて。
そして辿り付いた答えは―――












BATTLE 05 『試験』









AM0:11。
ゲーム開始からおよそ10分。
夜の闇に包まれた学校を見つめながら、跡部は一人、5メートルほど離れた所にある茂みを見つめていた。

一見すると何の変哲もない草の茂み。
しかし、跡部の持つずば抜けた観察力―――眼力<インサイト>はそこに人の気配を見つけていた。
その草むらの影にに、誰かいる。
「(………殺気は、ねぇな…………)」
出席番号の関係上、4番目の出発である跡部の前に学校を出たのは赤澤、亜久津、ジローの3人だけ。
必然的にこの場にいるのはその3人のうちの誰かと言う事になる。
「1番は聖ルドルフ、赤澤吉郎。は…………違うな。」
教室を出る時の赤澤の態度からするとこの場所に危険を冒してまで潜む事はないだろう。
叫んで恐怖をそぎ落としていたが、根本は怯えているようであったし。
そもそも次に彼が信用しているであろうルドルフの連中がやってくるのは、14番目に教室を出る金田。
待つとしたならば14×インターバルの2分―――約30分もこの場所にいなければならない。
5、6番後を待つ程度ならわかるが、普通の人間の心理で13番先の人間を待つという事は普通しないだろう。
―――それが参謀、観月はじめならば話は少し変わってくるのだろうが。

「…で、2番、山吹中、亜久津仁。」
奴は元々逃げたり隠れたりする事に屈辱感を感じる奴だ。
奴の試合を見ていれば全身からそんなオーラを纏わせているなど手に取るように解る。
あの獰猛な攻撃はそれを象徴しているのだろう。
だから、恐らくコレほどにまで俺が接近したのを感じ取ったならば、その瞬間に殺しにかかってくる。
例え油断をさせる為に待っていたとしても、俺がここに神経を集中させて離れれば早々に後ろなど向かないし、
近づきもしない。
逆に墓穴を掘る形になる。
それ以前に、この極限に近い状況下で更に鋭さを増したこの眼力の前で易々と殺気を消せはしないのだが。

―――つまり。

「ジロー、いい加減起きろ。………こんな所にいると真っ先に殺されるぞ。」
冷静に相手の思考を読む自分に反吐を感じながら、跡部は予想を確認する為、少し大きめの声をかけた。
そこに誰がいるのか、なぜそこにいるのか、答えに自信があるからこそ出来る行為。
「…1分経過、か。」
声をかけ、すぐに右手の腕時計(政府からも支給されていたが、使い慣れた自分の時計を使っていた)を見る。
インターバルを終え、次の人間が来るまで残り1分。時間がない。
言い終わった跡部はすぐに移動の為の準備を開始する。
「(一種の賭け、だな………。)」
ジローは本来、声をかける程度では起きない。
正レギュラー…それも自分と樺地、宍戸、忍足位しか知らない特有の起こし方がある。
だが、そこまでやるには時間がないし、それにジローを起こしても特別な利益があるわけでもない。
だから、声を一応かけ、起きなければ放って行くつもりだった。
「…………。」
声をかけた茂みからはしばらくの間、何の返事も返ってこなかったが、
やがて「んぁ~…」という寝起きとありありとわかる声が聞こえてくる。
「(やっぱり寝てやがった………)」
跡部の予想通り、茂みの影で気配を消したまま寝ていたらしい。
相変わらず忍者のような芸当だなと呟きながら、更に声をかける。
彼の深すぎる眠りの浮上さえ確認すれば、後は声だけでも十分だ。
「さっさと、起きろ。」
「ん~?えと………あ、あとべ~??」
そして足を起こし、反動を利用してむくりと起き上がった際に揺れる羊毛のようにふわふわとした髪。
紛れもなくジローだ。

「おはよ~」
「『おはよ~』じゃねぇよ。俺がお前を見つけて起こさなかったら一体どうなってたと思ってんだ。」
「おれ、寝てる間は絶対見つからない自信あったし、それに、あとべが起こしてくれるって信じてたし。」
呆れる跡部の顔に無邪気な笑顔を浮かべ、ジローは首を回して立ち上がった。
何時もは倦怠感なんて全く感じさせないジローが何時になく疲れて眠そうだ。流石に状態と場所柄か。
「実際亜久津、だっけ?…ソイツにも見つからなかっただろ?」
「まぁ、それはそうだが…」
ジローの寝ていた場所は殆どの人間が通るような目立つ場所から少し外れた場所。
確かに天邪鬼な亜久津が先回りをしようと通ったかもしれない。

が、しかし。

「だが、それとコレとは話が違うだろ。」
「…そう?」
「俺がここを通らなかったらどうしたんだ、お前。」
「絶対跡部はおれの予想を裏切らないもん。信じてたし。」
「んな事自信を持って言われてもな…」
『今まで仲間だと思っていた者に殺されるかもしれない』。
そんな疑心暗鬼を引き起こすように設定された極限の状況下にも拘らず、
ケロリと『信じてた』と言い切るジローに跡部は木に背をもたれさせ、ため息をつきながら内心で笑みを漏らした。
一見すると呑気で後先考えない性格。だが、裏を返せばどんな時にも動じず、変わらないと言う事。
信じるものがなくなって、強制的に変わる事を求められるこの場所で
まだ信じる事が出来るものがあると言う事の喜びをこいつは知っているのだろうか。
俺は疑問符を浮かべたが、すぐにコイツが知っててやってたら確信的だなと考えを打ち消した。

「…さてと。次の奴が来るから俺は行くぜ?」
「え~?」

跡部は時計を見、体勢を整えると傍らに置いてあったディバックを肩に背負った。
時間は12:14。
既に2人の人間が学校を出発している。1人は不動峰の。
もう1人は青学の、乾。
「(不動峰の奴と乾…か…)」
乾は兎も角、他のどの学校よりも信頼関係が強いだろう不動峰が乗るとは到底思えない。
実際、跡部もその見解を見せていた。
が、しかし、生存本能を脅かされる状況下に置かれた人間の精神力など儚いもの。
理性が効かず、生きたいという感情のままに行動してしまう事もありえない話ではない。
ならば信頼関係が強い分、裏切りの波紋は他の学校よりも大きいはずだ。
それ以前に頭の橘が乗る気なら、橘を信じ、連中が一団となって乗ってくる可能性が高い。
桃城が死んだ時の状況を見る限り神尾辺りなら反抗するかもしれないが、
『乗らないだろう』という安直な理由で警戒を解き、殺されてしまったのならたまったものではない。
協調性が強すぎるのもこういう時には非常に不便だ。

「じゃぁな、ジロー。」
だから、跡部は少しでも早くこの場所を離れ、目的地へと到着しておきたかった。
実際、ジローも話しかける事なく放って置いていくつもりだったが、
流石に幼馴染に対しては冷酷に徹し切れなかった。
『信頼』。辞書で引けば、それは『信じて頼る事』。やろうと思えば容易に出来そうな定義だ。
でも、この島に命を持つ人間はそれが酷く大変である事を知っている。
信じたい。でも、出来ない。
苦しむ過程が多いからこそ、人は信頼に余計な定義を求めないのだろうか。
「…あ!!跡部がいくなら、おれも行くよ。…跡部を一人にするなんておれ嫌だC~」
踵を返し背を向けて歩き出した跡部に、ジローはぱっと起き上がり、てくてくと親に離れまいと歩く雛のように
彼の後を追う。
ジローももちろんこの状況下がどれだけ危険かを知らない訳ではない。
そして、そんな場所で寝ているというのは危険極まりない行為である事を知らないわけでもない。

「折角会えたのに、別れるなんていやじゃんか~!!」
ジローがこんなにも危険な賭けにでたのは他でもない。跡部と一緒に行動する為だったから。



*****



『おい。早くしねぇと置いてくぞ。』
『アイツも必死なんだからよ、少しは待ってやれよ…な。』
『いいよ。大丈夫だって。おれ、置いていかれてもついていく自信あるし。』

思い出す記憶の1番古いところ。
その頃から自分と跡部、宍戸の3人はよく並んで同じ道を歩いていた…と思う。
おれたちが3人で合う話なんて1つもなかったのに、初めて会った時、なんか自然と仲良くなれたんだ。
親同士が古い知り合いらしくて繋がりがあったから…ってのもあると思う。

…まぁ、それを知ったのは仲良くなってから数日たってからだけど。

のんびりしててなんでもやってもらっちゃってたおれと外国育ちで何でも出来た跡部。
世間知らずな跡部のサポート係って感じだった庶民派で努力家の宍戸。
今思い返しても高校で会ったら絶対仲良くなれなかったと思う。
だって、跡部はナルシストで、天才肌。宍戸と正反対だし、おれみたいにのんびりしてる事嫌いだし。
そんなおれたちだったから、出かけるときはいつも一緒のパターンだった。
跡部が地図を片手に先頭を歩いて、宍戸が周りを確認しながら『ここ違うんじゃねぇのか?』って注意して、
おれは遅れないよう、眠い目をこすって追いかけた。
跡部の趣味だったテニスを見よう見まねで始めたのも、たしかこの頃だった気がする。

関係が変わったのは中学のはじめ。
跡部が家の事情で氷帝に移動することになったのがきっかけ。
跡部も宍戸も中学になったらテニス部に入部する、ってのははじめから決めてたみたいで
入学して来るなりその時の部長さんをボコボコにしてたし、宍戸はずっと「跡部め…」ってライバル心を燃やしてた。
そんな中、寝ることが何よりだったおれは入らなかった。
…正確には。
自分を置いてどんどん進む2人が怖かったんだ。テニスが2人を連れて行くのがたまらなく怖かったんだ。
『正レギュラーに向かって伸びる2人に追いつける気がしない。』
だから無意識にテニスに嫉妬して距離を離してた。

『…ジロー。』
そんなおれに跡部が声をかけて来たのは入学後しばらく。
氷帝のジャージを着てる跡部を見たのは入学式での一件以来だった。
…今だから思うけど、跡部はあの時からすでに
おれのボレーの腕とテニス部に入らなかった理由を薄々見破っていたんだと思う。
『テニス、やらないのか?』
『だって。』
『ふん…まぁいい。1ゲーム、付き合えよ。』
だから、誘ったんだと思う。
つまらないことでテニスをやらないおれに言葉よりも大きな一言を言うために。


『…お前はまだ、俺様に負けたこと無かっただろ?』


初めての”テニス”と呼べる試合。
壁打ちとは比較にならないスリル。スピード。テクニック。
やってくうちにボールが何処に来ても打ち返せるようにと前に出て、
いつも通りボールを打って…そして目を疑った。
あんなに速かったボールが急にふわぁあ~ってやわらかくなってポトって落ちたんだ。
偶然だったからどうやったか解らない。でも、なんかすごい事が起こったん だって理解だけはした。
それを跡部は静かに見つめてた。

『………テニス部に来い。』
そして言った。
『え。』
『お前の手首は天性の柔らかさを持ってる。
 そのスナップを利用すればどんなボールでもいなせる…正レギュラーまで上がってこれる。』
『………。』
『ジロー。お前が何を心配しているのか知らねぇが…また一緒に地図を持って行こうぜ?』

―――3人並んで、全国へ。

ずっと前方でずっと先の事を見つめ、自分達を導いてきた跡部。
転び、遅れそうになる自分を常に気遣ってくれた宍戸。
彼らがいたから、おれになって、おれがいる。こうやって道を間違わずに歩いている。
そして、いつかは別れるけれど、その時に困らないようにって、2人は色々な事を教えてくれた。

彼と宍戸になら―――命を捧げても良かった。


*****


「ジロー…お前は俺についてくるな。」
しかし、そんなジローの思いは怒りの篭った跡部の言葉に拒まれた。
「俺と一緒にいれば頭数が増える分、発見されて共倒れになる危険が増える。」
「そんなの、おれが何とかするよ!だから」

「俺は一人でも多くの奴に生き延びてもらいてぇんだ…ジロー、お前にもな。」

返って来たのは『跡部らしさ』のない言葉。
…いつもの跡部ならこの状況でも人を見下すような眼で『てめぇがいると足手まといなんだよ』とか、
『俺に頼ってるんじゃねぇよ』と言っていたと思う。
だから例え、それが嘘で塗り固められたものだったとしても、そう言ってくれると思っていた。
人間関係とかはホント不器用で、中間が出来ない極端な人だから。
「…………………。」
一見すれば、自己中でナルシストで、我侭で。そして、皆を引っ張ってるように見えるかもしれない。
でも、おれは知ってる。
合宿のとき低血圧だからって普通の人よりも何時間も早く目覚ましをかけてる事。
俺様俺様とワンマンにしながら、さりげなく宍戸やおれや…皆のことを常に気にかけている事。
練習のしすぎを滝に心配されて頭が上がらない事。
次期部長の日吉の為にこっそりと部長職の引継ぎ準備をしてる事。
そうやって自分のプライドを守ろうとする、負けず嫌いな人。
そして。跡部はその辺考えた上でいつもの『跡部らしさ』を出してるんだと思うけど。
こうやって本当の気持ちを聞けた事は素直に嬉しかった。

「………じゃぁ、またな。」
色々考えたんだと思う。
どうやってらしさを貫こうか、って。でも、考えて、無理だったんだと思う。だから、追えない。動けない。
―――誰よりも仲間を大切にする跡部の拒絶に、おれは思いを貫けない。

「おれじゃぁ……駄目なの?」

思わず、口から呟きが漏れた。
今、あとべに一番伝えたい言葉。でも、言えなかった言葉。
おれは感情に左右されるから、ししどみたいに中立で客観的な意見なんて考えられないし、言えない。
忍足みたいに頭が良い訳じゃないから、どんなときにも冷静な判断が出来るって訳じゃない。
鳳や滝みたいに自分の身を削っても他人の為だけに尽くそうって考えは出来ないだろうし、
向日みたいに自分を貫く事も出来ない。
我侭だから、樺地みたいに何でも付いていきますって主従関係に甘んじる気もないんだ。
日吉みたいに自分を1番にしようとする努力も一緒。
…ましてや跡部みたいに先を考え、行動する事なんて出来ないだろう。

おれを思い出して目に映るのは、いつも一生懸命に跡部に―――皆について行こうとした昔の自分。
なんでも人に合わせればいい。そうすれば自分が外されることもないだろうって思い込んで、
先を行こうとしなかった自分。
きっと、跡部の中のおれはまだこのままなんだろう。
だから、苦労をさせたくなくて、苦しませたくなくて、庇おうとしてる。
「おれだって…跡部を守りたいのに…先を歩きたいのに。」
守られてばかりの悔しい気持ちが、心の中に青い水に垂らした絵の具のように混ざり、広がる。
このまま黙ってあとべを見送ったら、きっと自分に待っているのは後悔と、彼の中にも残り続ける幼い自分の姿。
―――もう。おれは雛鳥じゃない!!

「おれじゃぁ…跡部は救えないの!?」

”救おう”と思った。
だから、これからの行動は『守ってもらう為』に行くのではなく、『彼の心を救う為』に。
何かを隠しているんだったら、自分にも分け隔てなく話してほしい。
相談に乗らせてほしい。いつまでも後ろに隠れる存在ではなく、進んで前に出る存在になりたい。



「…………。」
動き始めた背中が止まる。
跡部は黙ったまま動かない。
「…跡部?」
「もし。」
「?」


「…お前は俺が『ゲームに乗る』と言っても尚、ついて来るか…?」


耳に届くその瞬間、声が反響した。
不協和音。うまく頭の中で声が単語にならない。
「お前は俺が氷帝の奴―――例えば、宍戸を殺すとして。」
混乱するジローを覚醒させるように跡部はポケットの中から取り出た銀色に光るものを突きつける。
それは普段見慣れないとても独特なフォルムを持ってジローをさらなる混乱へ導いた。

え、なんだこれ…銃?

「それを黙ってみていられるのか?」
そのまま跡部は銃と思われるものの先、所謂銃口をジローへと向けたまま、更に問いを重ねる。
「何の冗談?」
やっとでた声は乾いた笑いを伴った確認。
「だとしたらどうするよ?」
「…本気?」
抑揚のない低音に、思わず数歩後退する。
目の前の人物から放たれるなにかよく分からない感覚。思わず全力で逃げ出したくなる恐怖。
それを言葉に表すなら―――殺気。
そして、今までに見た事の無いほど冷静で淡白な跡部の表情に背筋がぞくぞくとする感覚を感じる。
感情の欠落した…人形のような冷酷な顔。これが『ゲームに乗った人間』の表情なのか。
「あ…」
現実を見ようとすればそのギャップに押しつぶされそうだ。
「…跡部は…ゲームに、乗るの…?」
震える声を抑え、目の前の人物に問いかける。
「…あぁ。」
淡白な返事。
跡部を守る事が他人の死に繋がる。あわよくば自分自身も跡部の手にかけられる。
突きつけられた現実に非現実っぷりを感じて恐怖しか沸き上がらない。
回答によっては今殺されるのだろうか?
「………。」
でもジローは自分の考えを変える気は無かった。
それを宍戸と比べると言うのはジローにとって酷な事であったが、宍戸に会った時は会った時で考えることにした。

「いいよ。跡部の為なら何でもする。」
全てのものをむやみにしても。今はなによりも跡部と一緒にいたい。









「……………いいぜ、ジロー。」
「え?」
「テスト合格だ。」

言い、跡部が先ほどまで向けていた銃口を下げた。
沈黙を破ったその声に刺はなく、先まであった冷徹で冷酷な表情も消え失せる。
まるでとり憑いていた何かが落ちたような劇的な変化。
ジローは数刻の混乱の後に”あとべらしさ”が戻ってきたのだと理解して、
その間自分が呼吸をしていなかったのを欠伸で実感することになった。
「………あ。」
もちろん、恐怖がなかったわけではない。それこそへたへたと座り込んでしまいそうになる位に怖かった。
でも、この位では変わっていないと思われるかも知れなかったので、欠伸共々そこは必死に隠す。
「お前が軽い気持ちで『ついてくる』って言ってたんだったら、俺はお前を見捨てる気だった。」
そんなジローを鼻であしらい跡部は会話を続ける。
「でも、お前は宍戸を見殺しにしても俺についてくると言った。だから合格だ。」
「って事はあとべはゲームには…」
「のらねぇよ。」
まったく、とでも言いたげにため息をはく。
「俺様はこんな殺人ゲームを盛り上げてやるほど善人じゃねぇ。」
「それに…言っただろ?俺達は”全員”で生き残るんだ。誰一人欠けさせるわけにはいかない。」


流石にここにきて、安堵に腰が抜けた。



「…そういや、どこに行こうとしてたの?」
では、2人並んでの移動…と思ったが、
そう言えば跡部が向かっていた方向が一直線に西だった事を思い出して移動地点を聞いてみる。
目的地がアレば離れてしまっても後々落ち合う事ができるだろうという希望があった。
「…。」
「決まってなかった?」
「いや…………灯台だ。そこに滝が来る事になっている。」
そして、返って来た答えはジローに疑問符を浮ばせるには十分な言葉だった。
「え?…滝に会うの…?」
「あぁ。できれば乾にも会いたかったが…」
予定なら先ほど待ち伏せて会うつもりであったが、もう既に彼は学校を出てしまっているだろう。
居場所にはなんとなくの予想が付いていたが、不用意に行動して迎撃されてはたまったものではない。
跡部は後に回すことに決めた。
「…さてと。これで目的地もわかったな。行くぞ。」
「ちょ、跡部~。」
足を速めた跡部にジローも遅れないように足を速める。
結局後ろをついて歩くのは自分なんだなぁ、とジローは思いながら、
それでも、跡部の中の自分の像が更新されている… と思うことにして。
「「灯台へ。」」

2人は希望に向かって歩き出した。






【プログラム1日目 残り人数 39名】





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