バトテニTOP>>長編テキスト(1日目)>>026『反逆』




「ついに、巻き込まれたよ……BRに。」

こうやって、血みどろの復讐をしているけれど。
お前達の悲しみを、苦しみをこの国に伝えようとしているけれど。

「2人は戦いを続けたほうが良いと、首を振るかい…?」

オレは、満たされない。
どれだけ血を浴びても、言の葉を放ち続けても。
「……オレにはもう、お前達の声が聞こえないんだ。」


沈黙が、怖いよ。










BATTLE 26 『反逆』









「……ん……。」
「やっと起きたみたいだね。」

しばし”休息”をとっていた傍らの人物の覚醒を見、乾はなんでもないという風に声をかけた。
「…目覚めはどうだい?観月。」
「えぇ…キミのお陰で人生の中でこれ以上無い位最高でしたよ。」
自分で気絶させておいて何を言う。苦虫を噛み潰したようにうめく観月の皮肉。
「それはよかった。」
乾はそれを表面だけで受け取り、聞き流しながら作業に戻る。

「(これだからこの人は…)」
ぶつぶつそう思いながらもすぐに霞がかる頭を覚醒させて、観月は頭を本題へと切り替えようと頭を振る。
本当にコレが悪夢で、目が覚めればベットの上で、
こうして仲間達に馬鹿にされたり嫌味を言われるような平和な一日であればいいのに。
しかし、コレは紛れも無く現実の出来事。
恐れていたプログラムに後輩達ごと巻き込まれ、目の前の人物に殺されかけ、そして。

「…このボクへの不信感ぶりなどたまりませんね。」

動く度にジャラジャラと響く音。
足元を確認すれば自分に僕の攻撃が届かぬようにと縛り付けられたのだろう、鎖と左足。
「自分から『協力してくれ』と言ったというのに。」
鎖は恐らく先代の参加者が武器として入手し、ここに何らかの理由を持って仕込んだものだろうが、
わざわざそれを持ち出してきて使っているというのが酷く腹立たしい。
行動するつもりも無かった分、余計に。
「あぁは言ったけど、どう動くかわからなかったんでね。」
「対策は取っておきたかったんだ」と言う乾。
彼は乗る気ではないらしいが…ここまでされると果たしてどこまで信用していいのかわからなくなる。
まぁ…この島にくる以前から彼に無条件で信用されるような行為をしていたつもりはないが。

「……で?僕が寝ている間に何をしてたんですか?」
とはいえ、移動以外の直接的な行動を束縛されているわけではないし(流石に緊急時は外してくれるだろう)、
例え鎖がなくても先の戦いから勝ち目は薄いだろうと判断して話を先に進める。
乾が最終的に自分を殺すか殺さないかは兎も角、
今現在行っている行為は自分の狙っていたもの―――政府への反逆―――と同じように見える。
ならば逆に利用してやるまで。
「…まさか貴方ほどの人が只、のんびりと休憩していた訳では無いのでしょう?」
だから、それまでに少しでも情報を掴みたくて、観月は少し挑発気味に問いかける。
「……。」
傍らに置かれた時計は22:07。最後に乾の携帯で確認した時間から5時間近くが経っていた。
3日間―――72時間というごく限られた制限時間の中で、
その間乾が何もせず人様の寝顔を鑑賞していたとはプライド的にも状況的にも思いたくない。
観月としては嘘でも「やっていた」と言ってほしかった。

「まぁ…ね。」
しかし、それに乾は言葉を濁した。
「まさか…危険な事でも?」
「いや?」

見せたのはパソコンのディスプレイ。 そこには自分の集めたBRの情報が集約されていて。
「勝手に見てしまったよ。バックの中身共々ね。」
「なっ…」
別にパソコン共々、持ち物の中(そのBRのデータ以外で)見られて困るものは何一つと言って入ってはいない。
そして、見られた相手は今回の参加メンバーで最も政府が恐れているであろう人間、乾貞治。
その殆どが彼の知っている情報と大差ないものだろう。
だから困りはしないのだ。
しかし、それを”何の連絡もなしにやっていた事”に対して、見られた事以上の怒りを観月は感じていた。
一方的な情報の開示。データマンとしてのプライドが許さない。
「…じゃぁ、どうして見るなら起こしてくれなかったんだ!」
「起こすと色々隠されてしまいそうだったし、この方が安全だったのでね。」
「だが!…っ」
言いながら思わず仲間うちでもあまり出さない熱情で声を荒げた自分を自制する。
いつも以上にここでは感情的になってはいけない。
僕らが求めるのは『勝利』。あの日のルドルフのような負けは…本当に許されない。
「これは…プライバシーの侵害です。」
そして、諦めにも似たため息。
どれだけ非難を飛ばしても、拘束されている今、自分に選択肢は無い。
向こうだってわかっているから謝罪もないのだろう。

「乾くん、いいかげんこの場での隠し事はやめませんか。」
…とは言え、追従の手は止めない。
諦めればそれ以上乾は話そうとしないだろう。
「別に、無いよ。」
乾はその理由についてあえて観月にも黙ることにしたらしい。
口では言えない内容なのかとも思ったが、手が動く様子もなく、口でも口外でも秘密にされた観月の表情が曇る。
「…貴方のことです。起こしもせずに単に見るなんて事はしないでしょう?」
「他校である君には俺の心理は100%解らないと思うけど?」
「確かに、僕はルドルフの人間。青学である君を普段から見ていた訳ではありません…ですが。
 この状況下での君の状態はわかっていると思っています。」
「………。」




「……………君は、どこまで手を広げているんですか。」




「(…やはりね。)」
観月は首輪を考慮してそれ以上を口にはしなかったが、乾はその先を瞬時に理解した。
いや、はじめから…少なくとも彼がBRに関するデータを持っていた時点からわかっていたことなのだ。
観月は例え自分が死んでもこの”ゲーム”に乗るつもりなのだという事も、
そして、結論がそうなれば計画の成功率を上げるために自分に対して探求の手を伸ばす事も、
すべての行動が遅かれ早かれの予定調和だった。
―――しかし、予想よりもずいぶんと行動が早い。

「流石だね、観月。」
だから、素直に乾は賞賛を口にした。
「なら。」
「まぁ、待ちなよ。」
乾は失言をしてしまわないよう細心の注意を払って近くの紙束を鷲掴み、丁寧に一文字一文字を書いていく。
書きおえ、観月に見せつけるように紙を持って言葉をつむぐ。
「……………実は……君のプライベートなデータも見たくなってね。」
言葉で伝えるそれは、あくまでもフェイク。後の布石。
「聞く限りキミのデータは周りにも殆ど漏れていないようだし、俺なんかに言われても困るだろう?
 だから今までずっと秘めていたんだが…こんな状況になってしまった今、それを自重する必要は無い。」
ささやくようにして呟くそれ。
こうして事前に『乾貞治は少々ずれた感覚をしているのだ』と思わせておけば、
観月を是が非でも右においている理由を明確にできるし、筆談をしていても怪しまれない確立が高くなる。
計画の難度は多少下がるだろう。
「……。」
「それに今の君は逃げたくても逃げられない。まぁ、逃げるつもりも無いだろうけど。」
迫り寄った乾にフェイクと知りつつも観月の顔がわずかに歪む。
「ゆっくり、データを調べさせてもらうだけだよ。」
我ながら首輪につけられたマイクの向こうの人間にはあまりいい顔のされない単語列だと思いつつ、
嘘を付くなら派手にやった方が面白い。





『立海大付属、幸村と連絡をとった。』
『向こうからBRのHPにアクセスして、ここに最新情報を送ってもらっている』





そして、差し出す紙。
本心。

「…・・・・・・・・・・・・・・・本気なんですか?」
(フェイクとしての発言含め)あまりに突拍子も無い発言に、思わず首輪の存在を忘れてしまっているらしい。
開いた口がふさがらないと言った表情で観月が自分を見つめる。
呆然としたままの彼から致命的な一言がでなかったのは不幸中の幸いだろうか。
考えても思う。連絡の立たれ救援など全く期待できない筈の島で外部に連絡を…
更に情報のやりとりをしようなどと誰が考えるか。
バレれば待っているのは協力をしてくれる幸村を含めた全てに対する確定的な死。
下手すれば自分達や優勝者、家族はもちろん、関東テニス関係者全員の首が飛びかねない。
見つめる観月の表情が硬くなる。
「そんな…まさかとは思ってましたが、そこまでだなんて。」
「信じてもらえるとは思ってないさ。」
「キミじゃなかったらこんなこと信じる気にもなりませんよ…非現実的過ぎる。」
「まぁ、キミにも隠していた位だしね。」
バレれば自分達が死ぬだけでは済まない大反逆。
故に乾は当初仲間として安心を持てると判断していた観月にすらも真相を教えるつもりは無かった。
ーーー否、この技術のもっとも重要な所は今後も観月に教えるつもりはない。
「そして。これでキミは本当に逃げられない。」
乾は注意を促すように『盗聴器が仕込んである事を忘れないでくれ』の文字をさりげなくちらつかせ、言葉を発する。
こちらも本心だった。
「…まぁ、ここまで話したらみすみす逃がすつもりも無いけどね。」

”これ”はBRの全てを根底から揺らすかも知れない試み。
ここまでの事実を知ったなら、もう自分達は”通常ルート”へは戻れない。

「(ぁ)……こんな事をして…いいと思っているんですか?」
思い出したように冷静さを取り戻して嘘と現実の合間を埋めていく観月に、
やはり彼は激情型のようだ、発言には注意しなくてはいけないな…と乾は思う。
咄嗟でも肝心な要点を口にしないだけ冷静ではあるようだが…
「そう思わなければこんな事はしない。」
「それは!……そうですが…」
「君は俺を非難するかもしれない。が、コレが俺の考えなんだよ。」
「…。」
「俺には、君が必要なんだ。」

「…………………考えさせてください。」
あまりの事の為か、焦る声。
それだけ言って、観月は先ほど乾が注意文を書き込んだ紙を自分の方に引き寄せる。
握られたペン。殴り書きされ始めた文字は『具体的にはどこまで』。
「いいよ、構わない。」
返答をかねて指を指したパソコン画面。映していたのは過去のBRの優勝者情報。
ずらりと並んだそれに見知った単語が見えて観月の表情が険しさをます。
『あくまでも俺の予想だが、正しければ『死神』は過去プログラムに関係している…下手すれば、生徒だろう。』
パソコンのウインドウを閉じ、キーボードを慣れた手さばきで小気味良くタイピングしていく。
もちろん首輪の盗聴器の辺りに防音する為の仕掛けをしておく事は忘れていない。

忍足同様、乾もまた思っていた。
文面通りの『死神』システムは非効率的だと。
もし例え譜面通りに『死神』が採用されてその人間が毎回殺されたとすれば、 その時の出費は並みではない。
独裁国家化しているとは言え、それはただでさえ革命を企てようとする反政府組織にとっては格好の餌だろう。
下手をすればそれを元に革命を起こされかねない。
それに優勝者などを使うのであれば、わざわざ当て馬式を変える意味がない。
…だから考えた。
『死神』は過去に何かしら関わりのあった人物の処刑方法として持ち上がったものではないのだろうか。と。
生徒達が『死神』を殺せば自分達の手を使わずに闇の内に葬る事も可能になる。
―――すべての人間に恨まれ、殺されることを前提とした『囮』。
それが死神システムの基礎だとしたら。
そして、もし、その仕組みを理解し、『死神』を味方につけることができたとしたならば。
…それは物的な反逆より余程質の悪い反逆になるだろう。

「君も俺同様データマンだ。言っている事は解るだろう?」
「ええ…」
「何か不満でも?」
「それは、つまり……」

見つめる一部分。去年の開催一覧。
話題に上げるべきか悩むように視線が揺れる。
『彼…なんですか?』
去年の優勝者の中の、見知った名前。
…このプログラムに2年連続で参加する、優勝者。
闇に葬られ、観月すらも知らなかったそれに答える乾の表情は涼しい。
『いや、”それ”は違うと思うよ。それに…例え今回関係していたとしても恐らく『当て馬』だろう。』
別に、優勝者の連続参加は珍しいことじゃない。
しかも今回は『テニス部縛り』。そこにいる反政府行動を起こしそうな存在は喜んで放り込むだろう。
『まぁ、多少は期待しているんだろうけどね。』
この『戦争』は大統領のだ自殺防止だと言われてはいるが、裏は違う。
これはギャンブルだ。
参加者は政府筋、特権階級。間違いなくプログラムに参加することの無い人間。
追い求めるのは正義面をした人間達の崩壊と信頼していた人間に裏切られた人間の怯え。
そしてスリリングな殺戮ショー。
…恐らく鎖まで用意してここに居る自分達の今の関係もその期待から漏れてはいまい。
むしろ先程までの行動で注目の的かも知れない。

「どうして。」
言いとめた観月の言葉。続きは恐らく『どうしてそこまで?』。
「なんとなくだよ。」
「…」
「つまり勘だね。…当たっているといいんだけど。」
言ってマウスを動かし、最小化していたウインドウを開く。
現れたそれは観月が目を覚ますまで見ていたもので、各年のBR参加校の一覧を示していた。
恐らくは地区応援用だろう。
―――そして、そこに乾の思う「それ」はあった。

『日付は200X年…2年前の12月25日からの3日間。
該当学校は千葉県、六角中。
優勝者は決定後、都庁へ移動中に反逆行為を行ったとして射殺。
そのまま転落事故として闇に葬られた、俺たちに最も身近だったプログラムだ。
そして、”ある事件”が起こったことでその筋には有名な………ね。
 
…ご苦労な事にわざわざ関東区のテニス部メンバー…しかもレギュラークラスだけ集める政府の事だ。
『死神』がいるならばここに関わった人間の確立が高い。』





*****





「…不二達が、巻き込まれたらしい。」
既に暗くなってしまった空の下。
暗闇に飲まれ、紺色に染まった高台の小さな石の墓を見つめながら佐伯は一人佇んでいた。

…そこは2年前に居なくなった友人の墓。

「これは、偶然なのかな。」
幼馴染とその仲間達の突然の失踪。
各所で騒がれる『どこかの部活がBRプログラムに巻き込まれた』という、噂。
恐らく殆どの人間は明日の朝刊まで事実を知らないだろう。 いや、最終日を過ぎても知らない人間は居るだろう。
対岸の火事。人間は火に触れなければそれを顧みることはないから。
「………。」
噂の出所は信頼できる所。恐らくは本当だ。
しかし、開催を知っていながらも、オレには止める力が無い。
…………いや、止める力は持っている。ただ、それによって失われる命にオレは恐怖している。
2年前…六角でプログラムがあったあの日のように何も出来ずにここに居る。

「お前は俺を笑うかい?『覚悟を決めろ』と俺を追い立てるかい?」
自虐的な笑み。
傍らには数本のアリューム・トリクエトラムとかすみ草をメインにして作った花束。
ユリ科らしい白色の小さな花をつけるアリュームのその姿は、弟思いで健気だったあの面影を映し出す。
「それとも…『助けてくれ』と懇願するかい?」
答えを求めぬ問い。
自分達にとって”それ”は決して対岸の火事では無かった。
あの日も今も、『あの島』には誰よりも守りたい友人と、大切な思いを持った仲間が居る。
そして、この場所に俺は居る。

「亮…………
俺達を、淳を見て、お前は今、何を思っているんだ…?」


亮と最後に話したのは、2年前の冬。
先輩方の修学旅行がクリスマスになると聞いて急遽行った23日の前夜祭。
『にしても何でこんな時にやるんだろうな…?』
例年にない冬の修学旅行に俺達は不審感を持ちつつ、旅行の行き先がオーストラリアだと聞いて、
俺達はつい納得してしまった。
あっちは今頃夏だから。
『……でもいいの?私も参加しちゃって。』
『いいよ。いつも色々とお世話になってるんだし。』
そして、その席に”彼女”―――加藤明清を参加させようと言い出したのは亮だった。
入院している所為であまり顔を会わせる事は無かったけれども、”彼女”は実質マネージャーをしてくれていたから
クリスマスパーティの参加に対しては誰からも文句は無かった。

『クスクス……これでこのパーティにも華ができたんじゃない?』
『やだ、淳くんったら~。』
『あんまり持ち上げると調子に乗って木に登っちまうぜ。ブヒーって』
『おいおい』
『バネ、ちょっと言い過ぎなのね~。』
『あ、すんませ~んw』

だから、バネも、淳も、いっちゃんも、亮も、
たまたま中学に見学がてら遊びに来たダビデも、皆が心から会を楽しんでた。
たわいない談笑。プレゼント交換で亮がくれた自作のペーパーナイフは今も俺のそばにある。
だから俺達はこの日が何日も何年もずっと続いていくと信じていた。
若さゆえの過ち。



それが、俺達が全員揃って笑った最初にして最後の日だった。



「………………おっ。こんなところにいたのか?」
ふとかけられた声。背中越しに見える懐中電灯の明かり。
心当たりがあったので佐伯は後ろを見もせずに声の人の名前を呼ぶ。
ここを知るのは淳と、もう一人。
「…バネさん。」
「お前も好きだよな…ここ。しかも別にここが墓って訳じゃねぇのに花まで買って。」
自分を探しにきたんだろう。
その格好は今日の練習(と言っても突然の”訃報”に殆ど身になっていなかったが)終りのまま。
この状況下にあってトーンが変わらないその声は今とてもありがたい。

「”最後”に、感傷に浸りたくてね。」

あれから2年。
亮も淳も…そして”彼女”もここにはいない。
優勝者の凱旋パレード。そこに飛び出した少年を庇おうとした亮。
彼等に銃を突きつけた警官に対して発砲した”彼女”。
瞬間、弾幕は俺の前で2人をあっけなく吹き飛ばし、
『離反者の弟』のレッテルを張られた淳は観月の勧誘を理由に逃げるように六角から姿を消した。
…そして、恐らく今頃は”彼女”が向かったあの島にいるんだろう。
あの戦いで俺は様々なものを失って。失っていく。

「………………サエ。」
「大丈夫。」

「俺は、やれるよ。」
寄ろうとするバネさんを制した。
ここに来たのは別に過去に戻る訳でも、触れに来たわけでもない。それはあの日の自分との、決別。
無力だった故に失われる恐怖に耐えるので精一杯だったあの日の自分との、離別。
「その為に取り返せるだけの力を得たんだ。」
…今の俺達には「力」がある。もう2度と俺や亮や淳のような人間を産まない様にする為に求めた力がある。
人を傷づけないようにする為に振るう、破壊の力。
これはもう、『対岸の火事』じゃない。俺達が参加し、介入する、戦い。
言い聞かせるようにして己を奮い立たせる。
「…無理すんなよ。」
「わかってるさ。」
今も残る、自分にはやはりなにもできないんじゃないかという漠然とした不安。
自分達が力を振るうことで多かれ少なかれ命が奪われる事に対する恐怖。
頭上の月。夜が終り、日が昇ればきっとこの不安も恐れも溶けるように消えて行くだろう。
きっと大丈夫。
「リーダーとして、アイツらを守ってやらなきゃ。」

―――亮。
俺にはやり残したことがあるんだ。

例え、この決断によってあの時以上の何かを失ったとしても。
その決断が誰かの心を大きく歪ませる結果になったとしても。それでも。
俺はお前のように、なりたい。

だから。





「俺は…反政府組織、『DEEP SEA』の行動開始をここで宣言する。」







【プログラム1日目 残り人数 30名】





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